国立政治大学大学生の日記

25歳です。18歳-21歳を米国デンバー大学で政治学を専攻中、ふと思い立ち、21歳から台湾の大学へ。Youtubeでは毎日動画投稿中。

【書評】喜嶋先生の静かな世界 / 森博嗣を読んで思ったこと

 

大学院のこと。そして、研究のことが細かく描写されている森博嗣の自伝的小説とも言える作品。

 

あらすじ

"文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年生のとき卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋、珠玉の喜嶋語録の数々。学問の深遠さと研究の純粋さを描いて、読む者に深く静かな感動を呼ぶ自伝的小説。"

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)

  • 著者森博嗣
  • 出版日2013/10/16
  • 商品ランキング4,728位
  • Kindle版208ページ
  • 出版社講談社

この作品は今の大学生にすごく読んで欲しい作品です。

主人公は大学4年生の橋場君。(森博嗣本人?なのかも) 彼はやりたい学問を研究したいと喜嶋研に入ります。そこでの生活と研究を通しての成長が、奇麗に描写されています。

多くの同級生は学部を卒業して就職。修士までは共に進む仲間もいたが博士課程には行かなかった。そして、卒論を手伝ってくれていた大学院の先輩の、突然のアメリカへの留学。その後、その先輩は現地の方と結婚。その先輩が日本に帰って来ることはなかった。様々な人間の波瀾万丈な人生が奇麗に描かれています。

喜嶋先生の頭の良さ。そして、偉大な研究者だということを随所で感じさせてくれます。そして、彼の研究室の弟子として、橋場君が真面目に研究に没頭する姿が美しく感じることが出来ます。

ずっと、空なんか見なかった。自分のこと、研究のことで頭がいっぱいだった。(373)

歳を取ってきた頃の橋場君のフレーズはとてもインパクトがありました。大学4年生からひたすら研究を続けて来たことの楽しさと苦しさを感じました。そして、ふと立ち止まったときに、自分の中で何か考えることがあったようにも感じました。それは自分の人生の意義とは何だったのかということでもあると思います。

私自身、中学生の時までは科学者になりたいという夢があったので、純粋に研究をするということの楽しさを味わえることに多少の羨ましさを感じずにはいれませんでした。

このまま味わえなくなるのではないかと恐怖を感じていたこともありました。しかし、この本を読んで学問の楽しさを再確認出来た気がします。

学問には王道しかない。それは、考えれば考えるほど、人間の美しい生き方を言い表していると思う。美しいというのは、そういう姿勢を示す言葉だ。考えるだけで涙が出るほど、身震いするほど、ただただ美しい。悲しいのでもなく、楽しいのでもなく、純粋に美しいものだと感じる。そんな道が王道なのだ。(211)

 とても美しいこの本を読み、自分の人生に少しでもいかしていきたいと心に決めました。
人生の方向を変えてくれるきっかけになった本であることは保証します。